109--Poet of the Fifth Dimension 五次元歌人---AI 29
しんしんと樹々に降り積む銀雪をしづめ深むる里山もやう endless silver snowfalls piling up on the trees are deepened by the tranquil beauty of mountains in the vicinity (C)2020Rika Inami 稲美里佳 前回108 よ り 華乃とのコメントのやりとりをしている間、私は素早くコミュニティにアクセスし、華乃がアーノルドに破門された原因になった投稿を探した。マウスを動かしパソコンいっぱいにひろがった投稿に目を走らせ過去の投稿をさかのぼっていった。2週間前の投稿にそれはあった。以降、華乃は投稿していなかった。私はこれだと思った。 彼女の投稿には次のように書いてあった。 「私は英語俳句は、日本の俳句と較べて簡単だと思います。名詞を多く使い、動詞はほとんど変化のない現在形を並べて作る英語俳句とは違って、日本語俳句は、切れ字や、助詞、助動詞の使い方に習熟していなければなりません。動詞も活用や時制の変化があります。 こうした品詞、言葉の使い方一つで、日本語俳句はその完成度に違いが出てきます。以上のことから、私は、英語俳句は日本語俳句に較べて、なんて簡単なんだろうと思っています」 あ、これが、アーノルドを怒らせたにちがいないと私は思った。それにしても、単刀直入に、熱心に俳句や短歌を研究している海外の詩人たちの前に、よくもこれだけ書くことができたなあ、と私は内心絶句していた。 なるほど、華乃の言い分ももっともなものがあると思うが、私は、英語俳句は、一つの単語そのものの意味に深さがあり、また音節の響きや並び様で一句に味わいと空間をもたせることができると感じていた。 こんな感想とは別に、私は、会員としてお世話になっているコミュニティに、こうした不躾な文章を投稿できる華乃の無神経さに疑問を抱いた。果たして、華乃は、人間なのか、相手の気持ちを慮る日本人なのか …… 続いて。 「それで、今はコミュニティから出されていて、エドワードの弟子になっているんです」 と華乃は言った。エドワードとは、イギリスの若い詩人である。 「そうなんですか」 ふ~