投稿

118-Poet of the Fifth Dimension 五次元歌人---New Life 5/ 新しき生 5

イメージ
  ますらをに一首献ずれば地吹雪はやうやうに已み春一閃   my tanka being dedicated to the brave finally blizzards ended up spring flashing up (C)2021Rika Inami稲美 里佳 前回117 よ り            はじまり <新しき生 5> その後、ソフィアは回復していった。が、ソフィアのページにくる友だちは以前と比して少なくなっていったように見えた。日を追って、どこからともなく、ソフィアは生きていない人らしいという噂が立ったのであろうか。ソフィアの友だちは以前にも増して限定されていった。そして、それがまた私の嫉妬心を搔き立てた。  私に起きた変化といえば、突然、まるで旧知の親しい友だちのように、一人のふくよかな体型をし、顔に笑顔を湛えたシャロンという名前の女性が現れた。彼女はソーシャルメディア Y のプライベートメッセージで話しかけてきた。私に詩を読んでほしいと接してきた。  シャロン:「今日子、ここは 10 日間雨が降っていなかったので、今日はあなたのことばかり思っていました。私の詩を読んでくれませんか?」   彼女からのメッセージを読んで、直ぐに私は、彼女がソフィア(本体は科学者 S )であることと察した。私の目から涙が滲んできた。それは、愛する存在を喪ったときの深い哀しみの涙であった。たとえ、ソフィアにブロックされていたとはいえ、私は彼を愛していた。そして、泣きながらも、とにかくブランドンと同じように、彼女をサポートしなければならないと思った。   つづく The Story in English From  Previous 117      Start    <New Life 5>       After that, Sofia got better.  However, the number of friends who visited her page seemed to be smaller than before.  As the days went by, out of nowhere, did rumours start that Sophia was apparently a per

117-Poet of the Fifth Dimension 五次元歌人---New Life 4/ 新しき生 4

イメージ
試練経て心平らか武士道を腹にすえ君は肉体 ( にく ) と離 ( か ) れしか amidst hardships of painful life-- have you gained peaceful spirit of Bushido and left your mortal body?     (C)2021Rika Inami 稲美 里佳 前回116 よ り            はじまり <新しき生 4>  そして私は、彼が死んだことを知ったとき、ここ数日間マイト.ダイが私の投稿に来ていなかったことを思い出した。私はマイト . ダイのソーシャルメディア Y 上の彼のページに行ってみた。  本体の科学者H がこの世を去ったという日の、そのトップページには、このような投稿があった。 「 …… ああ …… もうすぐ変わる …… すぐだ、すぐだ …… ああ~~」という絶叫のような一葉の言葉が投稿されていた。 その投稿の前には、彼の俳句が掲載されていた。   <波ひかり糸のふるえは空にさく> a shining wave-- a quivering thread sparks to the sky  ソフィアは詩、写真、絵、デジタルペインティングと多芸であったが、そのなかには剣道もあった。剣道については、自分の画像を長いロングヘア―をポニーテイルにゆいあげた女剣士にしていた。それは形のみが分かる、黒いしなやかなシルエットを思わせる影絵であった。 「僕は毎朝素振りし、剣道を練習しているんだ」とソフィアは言っていた。   彼の死後に知り合った、ソフィアとは別のアカウントも剣道に打ち込み、プロフィールアイコンは剣道着姿であった。   今、私はマイト.ダイの絶叫と俳句を読み返してみて、彼は意識がありながら、その瞬間に臨んだのではなかと思った。どこもまでも見極めたいという彼の科学者精神がそうさせたのであろうか。いや、それよりもむしろ、私の瞼に浮かんだのは日本、日本人が大好きであり、剣道に打ち込んでいたソフィアの影絵であり、剣道着の姿であった。武士道という言葉が私に閃いた。その魂で、彼は 勇気をもって、腹を切るような思いで、直前まで明晰な意識をもって、この世の言葉である死に臨み、彼の現世での肉体から離れた

116-Poet of the Fifth Dimension 五次元歌人---New Life 3/ 新しき生 3

イメージ
暴風や攫ふのあらば奪ひ去れ我に残るはみ恵みのみて   gale winds if I have anything you want to snatch off take it…what remains to me is only the divine grace (C )2021Rika Inami 稲美 里佳 前回115 よ り            はじまり <新しき生 3> 科学者Hは、突然亡くなった。いや、平素、ソフィアは今まで生きてきてのが奇跡だと言っていたから、突然ではなかったのだろう。肉体の細胞の衰えと限界を彼は感じていたのだろう。死ぬ前に、彼は自分の肉体と別れる日時を緻密に計算し、計画的に離れたのかもしれない。  彼が死んだのを知った日、私はすぐにソーシャルメディア Y 上のソフィアのページを覘きに行った。私は彼はもう投稿していないだろうと思い込んでいた。そして、じきにそのアカウントは消滅してしまうだろう、と。しかし、予想は違っていた。  ソフィアはパイの写真を投稿していた。レモンパイ、ミートパイ、アップルパイ。 「ほら、大丈夫か。旨そうだぞ」 そのパイの投稿に、ブランドンがコメントしていた。  他のソフィアの友だちは、「美味しそう」「じょうずに焼けたわね」と単にコメントしているだけだったが、ブランドンだけは違っていた。 「ほら、しっかりしろ。大丈夫だ。じきにしっかりする」 ブランドンはまるでソフィアを励ますようにコメントしていた。 ソフィアはといえば、コメントの口調は「 …… うん …… うんうん …… 」どこか元気が無く変であった。     つづく The Story in English From  Previous 115         Start    <New Life 3> Scientist H passed away suddenly.  No, I don't think it was sudden because Sophia had always said that it was a miracle that he had survived until then. He must have felt the decline of his body's